アトピー性皮膚炎ガイドライン2020年part3

アレルギー
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それでは今回は治療に関して勉強していきましょう

病態に関してはアトピー性皮膚炎ガイドライン2020年part 1

診断、重症度評価に関してはアトピー性皮膚炎ガイドライン2020年part2

を参考にしてください




治療

治療のゴール

症状なしor軽微で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要ない状態を維持

症状が軽度で日常生活に支障をきたすような急な悪化がおこらない状態を維持

と書かれています

要は日常生活に支障を来さないということが大事な治療目標です

治療方法

1 薬物療法

2 皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア

3 悪化因子の検索と対策

の3点が基本になる

ADは遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり、完治させうる治療法はない

したがって、薬物療法は対症療法を行うことが原則である

薬物療法

抗炎症外用薬

有効性と安全性が多くの臨床研究で検討されている薬剤は

ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏(カルシニューリン阻害外用薬)である

ステロイド外用薬は抗炎症外用薬として第一選択薬として使用されることが多い

ステロイド外用薬

AD治療の基本となる薬剤

皮疹の重症度に応じて適切な強さのステロイド外用薬を選択することが大事です

また、アドヒアランスを上げるために患者への説明、指導を十分行う必要があります

ステロイド外用薬で寛解導入し、保湿剤なども併用し寛解状態を維持することが重要である

3-4週間外用を行っても改善しない症例は皮膚科専門医への紹介が望ましい

ステロイド外用薬の使用法

日本では下記の表のようにストロンゲスト(I群)、ベリーストロング(II群)、ストロング(III 群)、ミディアム(IV群)、ウィーク(V群)の5段階に分類される

(アトピー性皮膚炎ガイドライン2018より引用)

重症度に応じたステロイド外用薬の選択は下の表を参照

乳幼児、小児においてランクを下げる必要はないが短期間で効果が表れやすいため注意が必要です

(加藤則人ら:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016 年版,日皮会誌,2016;126: 121-155.より引用)

剤型の選択

軟膏、クリーム、ローション、テープなどの剤型が存在する

基本は軟膏を選択する

アドヒアランスを上げるため夏期などには使用感を優先しクリーム基剤を選択することもある.

頭には通常ローションを使用し、痒疹や苔癬化皮疹にはテープ剤の使用も考慮する

外用量

第2指先端から第1関節部までの量(約0.5g)が成人の手掌で2枚分と指導しています

外用回数

急性増悪の場合には1日2回(朝、夕:入浴後)を原則とします

炎症が落ち着いてきたら1日1回に外用回数を減らし寛解導入を目指します

1日2回外用と1回外用の効果の差の有無については結論が出ていません

一般的には1日1回の外用でも十分な効果があると考えられています

急性増悪時は1日2回で素早く軽快させ、軽快したら1日1回に減らす方が良いとされています

 

ちなみに当院の教育入院では重症例で1日2回の入浴、1日4回の外用で治療を開始します。2−3日で劇的に改善します

外用部位の注意

部位によってステロイド外用薬の吸収率が異なります

前腕伸側を1とした場合、頬は13.0、頭部は3.5、頸部は6.0、陰囊は42とされています

高い吸収率を持つ部位についてはステロイド外用薬による局所副作用の発生には特に注意が必要です

顔については原則としてIV群以下のステロイド外用薬を使用します

外用中止

中止する際は急激に中止せず、寛解を維持しながら漸減あるいは間欠投与を行います

可能なら外用を終了しますが、再燃を繰り返す場合は後述のプロアクティブ療法を考慮します

 

ステロイド外用薬の副作用

ADの治療では、両親にステロイドに対する正確な情報を伝えることが重要です

全身性副作用

強いステロイド外用薬を使用した一部の症例で副腎機能抑制が生じたとする報告がありますが

弱いステロイド外用薬の使用例では副腎機能抑制、成長障害などは認められていません

適切に使用すれば全身的な副作用は少なく安全性は高いといえます

局所的副作用

皮膚萎縮、毛細血管拡張、ざ瘡、潮紅、多毛、皮膚感染症の悪化などを時に認めますが

中止あるいは適切な処置により軽快します

II群の長期使用により皮膚萎縮が生じたとの報告があります

皮膚の萎縮線条を除いて多くの場合は一時的で、頻度を減らすことで軽減することが可能です

タクロリムス

タクロリムスは細胞内のカルシニューリンを阻害する薬剤です

副腎皮質ステロイドとはまったく異なった作用機序で炎症を抑制します

副作用の懸念からステロイド外用では治療が困難であった皮膚炎に対して高い有効性を期待できます

薬効は薬剤の吸収度に依存しており、塗布部位およびその皮膚の状態に大きく影響を受けます

特に顔面・頸部の皮疹に対して高い適応のある薬剤として位置づけられています

注意すべき点としてはびらん、潰瘍には使用できないということです

「ADにおける タクロリムス軟膏の使用ガイダンス」に従うことが必要です

タクロリムス軟膏には16歳以上に使用可能な 0.1%軟膏と2~15歳の小児用の 0.03%軟膏があります

2 歳未満の小児や授乳中の女性にも使用できません

外用量

0.1 g(5gチューブから1cm押し出した量)で10cm四方を外用する程度を目安とします

成人での長期観察試験の結果を考え、血中濃度の上昇を回避し安全性を確保するために

日本では成人での0.1%軟膏1回使用量の上限は5gとなっています

小児では下記の様に体格に応じて投与量を設定します

0.03%軟膏の使用量は2~5歳(20kg未満)で1回1gまで

6~12歳(20kg~50kg)では2~4g

13歳以上(50kg以上)は5gまで

外用方法

灼熱感、ほてり感などの刺激症状が現れることがありますが、これらの症状は使用開始時に現れ

皮疹の改善に伴い消失することが多いのであらかじめ説明しておきましょう

経皮吸収のよい顔面や頸部にはきわめて有効です

体幹、四肢を対象とした本剤(成人用 0.1%)の有効性はIII群のステロイド外用薬とほぼ同等です

重症の場合は、II群以上のステロイド外用薬で寛解導入しタクロリムス軟膏に移行するとよいです

血中へ移行しやすい、粘膜、外陰部、びらん・潰瘍面には使用出来ません

また、密封法および重層法は本剤の血中への移行が高まる可能性があるので行わないで下さい

副作用

局所の有害事象として、灼熱感、掻痒、紅斑等が確認されています

これらは皮疹の改善に伴って軽減、消失することが多い

細菌による皮膚二次感染、ウイルス感染症等、皮膚感染症も報告されています

血中への移行に起因する全身的な有害事象や毒性は確認されていません

(0.1%タクロリムス塗布で一般的に 1 ng/ml 以下)

 

本日はここまで

治療はまだ続きます・・・

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