アトピー性皮膚炎ガイドライン2020年part4

アレルギー
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アトピー性皮膚炎ガイドライン2020年のレビューも

今回で最後です

 

プロアクティブ療法

 

(アトピー性皮膚炎ガイドライン2018より引用)

プロアクティブ療法は急性期の治療によって寛解導入した後に、保湿外用薬によるスキンケアに加え

ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を間欠的に塗布し、寛解状態を維持する治療法です

それに対し、再燃した時に治療を行うのがリアクティブ療法です

ADでは炎症が軽快し正常に見える皮膚も組織学的には炎症細胞が残存し、様々な要因により

再燃しやすい状態にあることが多いです(TARCなどが正常範囲まで低下していないことが多い)

潜在的に炎症が残っている状況でプロアクティブ療法を行うことによって

炎症の再燃を予防できることが多いです

連日→間欠塗布への移行は、瘙痒や紅斑が無く十分に改善した状態で行われることが重要です

プロアクティブ 療法中も保湿剤による毎日のスキンケアを継続することが推奨されています

抗ヒスタミン

抗ヒスタミン薬はADの掻痒に対して国内外を問わず広く使用されています

抗ヒスタミン薬の有用性については抗炎症外用薬と保湿薬に対する併用薬として検証が行われ

国内外 26 件のRCTのうち75%の試験で掻痒を軽減する効果が報告されています

抗ヒスタミン薬の使用はADにおける抗炎症外用療法の補助療法として推奨されていますが

抗炎症外用薬を使用することなく抗ヒスタミン薬のみで治療することは推奨されていません

ADに用いられる抗ヒスタミン薬は、抗コリン作用や鎮静作用が比較的強い第一世代と

眠気などが少なく抗コリン作用のない第二世代があります

第一、第二世代ともに治療効果に差がみられないことから第二世代を選択することが推奨されます

小児における注意
てんかん又はその既往歴のある患者で禁忌 
ケトチフェン(ザジテン®️)

てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者で慎重投与
ヒドロキシジン(アタラックスP®️)セチリジン(ジルテック®️)レボセチリジン(ザイザル®️)

重大な副作用として痙攣あり
クロルフェニラミン(ポララミン®️)シプロヘプタジン(ペリアクチン®️)ロラタジン(クラリチン®️)

 

シクロスポリン

適応は16歳以上で既存治療で十分な効果が得られない最重症の患者です

(強い炎症所見を伴う皮疹が体表面積の 30%以上にみられる)

3mg/kg/日で開始し、症状により5 mg/kg/日を超えないよう調整し8〜12週間で終了します

私自身はADに対するシクロスポリンの使用経験はありません

腎障害、高血圧、感染症などに注意し定期的に薬剤血中濃度(トラフ値)を測定します

長期使用の安全性が確立していないため軽快した後は外用治療に切り替えることが重要です

長期投与が必要な場合は2週間以上の休薬期間をはさむ間欠投与とします

ステロイド内服薬

ADに対するステロイド内服の効果を検証した質の高い二重盲検比較試験はありません

急性増悪や重症・最重症の寛解導入に時に用いられることがあり、経験的にも有効です

(私自身もADを合併した膠原病の患者さんがPSL内服でADの症状も改善されることをよく経験します)

長期間コントロールの治療薬としては副作用の点から一般的に推奨されません

 

妊婦・授乳婦への対応

ADの発症予防を目的とした妊娠・授乳婦への食事制限(食物アレルゲン除去)は推奨できません

鶏卵などの食物アレルゲンを経母乳摂取して乳児のADが悪化することもありますが

除去/経母乳負荷試験などで慎重に診断する必要があります

妊娠中の抗ヒスタミン薬投与は治療上の有益性が大きい場合には安全とされている薬剤の投与を行ってもよいとされています

母乳中に移行する薬物量は非常にわずかですが乳児の易刺激性や傾眠を引き起こす可能性を考慮して、第二世代抗ヒスタミン薬を選択することが望ましいです

通常のステロイド外用療法は全身循環への吸収は少なく、先天異常への影響は問題となりません

 

スキンケア

ADでは皮膚バリア機能と保湿因子が低下しています

保湿剤を使用することでアレルゲンの侵入、皮膚炎の再燃、掻痒感を抑制することができます

出生直後から保湿剤によるスキンケアを行うことでADの発症リスクが下がると報告されています

保湿剤を使用するタイミングは入浴直後が推奨されています

正常に見える部位も含めて全体に塗布し、皮膚炎の部位には抗炎症作用のある外用剤を併用します

寛解後も保湿剤を継続することは、寛解維持に有効とされています

 

入浴・シャワー浴と洗浄

ADでは皮脂、汗、黄色ブドウ球菌などが悪化要因となるため、皮膚を清潔に保つことが重要です

温度

42°C以上で掻痒が惹起されるため38~40°Cがよいとされています

入浴後は急速に皮膚から水分が蒸発するため速やかに保湿剤を塗布しましょう

石鹸・洗浄剤

石鹸・洗浄剤の有用性に関する質の高いevidenceは存在しません

デメリット

主成分の界面活性剤により皮膚の乾燥を増悪させる可能性があります

色素や香料などの添加剤で皮膚への刺激を引き起こす可能性があります

→重症例、乾燥しやすい季節、石鹸による刺激が強い場合には石鹸の使用を最小限にしましょう

メリット

清潔にすることで悪化因子を回避できます

→脂性肌や脂漏部位、 軟膏を毎日塗る部位、皮膚感染症を繰り返す部位には積極的に使用しましょう

上記のメリット、デメリットからよく泡立てて機械的刺激の少ない方法で皮膚の汚れを落とし

皮膚に洗浄剤が残存しないように十分にすすぐことが大切です

 

以上が大雑把なガイドラインのレビューになります

もっと詳しく知りたい方は原文を一読することをおすすめします

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